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1人ラジオドラマ「Solitary (孤独)Woman」作家/水城ゆう

15日は、水城ゆうさんの月命日です。水城ゆうさんについて、プロフィールを追加しましたので御覧ください。

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●今回朗読した「Solitary Woman」の著作使用権を解放してくださっている「水城ゆう」さん。
https://www.mizuki-u.com/
●YouTubeはこちらです。
https://www.youtube.com/user/juicymizuki
●福井県生まれ。作家、ピアニスト。
音読療法協会ファウンダー、現代朗読協会主宰、韓氏意拳学会員、日本みつばち養蜂(羽根木みつばち部)。
20代後半から商業出版の世界で娯楽小説など数多くの本を書いてきたが、パソコン通信やインターネットの普及にともなって表現活動の場をネットに移行。
さらに2001年にみずから現代朗読というコンテンポラリーアートを打ち立て、マインドフルネスと音楽瞑想の実践を深め、2007年にはNVC(=Nonviolent Communication/非暴力コミュニケーション)と出会い、表現活動の方向性が確定する。
表現と共感、身体と感覚、マインドフルネスと瞑想の統合をめざし、いまこの瞬間のナマの生命のオリジナルな発露をテーマに表現活動と探求の場作りをおこなっている。

●専門領域
音楽(ピアノ・キーボード演奏、即興パフォーマンス)
テキスト(小説、詩、シナリオ、評論、エッセイ)
共感的コミュニケーション/コミュニケーション・シフト
ミュージック・メディテーション(音楽瞑想)とマインドフルネス
ボイスコーチング、韓氏意拳、朗読演出、日本みつばち
【御本人HPより引用】

●【著書】
疾れ風吼えろ嵐(1986年、徳間書店)
熱風都市(1988年、中央公論社)
機密喰い(1989年、光文社)
赤日の曠野(1994年、青峰社)
夢巫女(ドリーム・オペレーター)・美緒(1994年、アスペクト)
紺碧の少女――南洋の奪取作戦1943(1995年、アスペクト)
誰も教えてくれなかったジャズの聴き方(2000年、ブックマン社)
BODY(2006年、モバイルブック・ジェーピー)
浸透記憶(2007年、モバイルブック・ジェーピー)
秘密(2007年、モバイルブック・ジェーピー)
アンダーワールド(2006年 - )
原発破壊(2011年、アイ文庫/Kindle)
現代朗読考――コンテンポラリーアートとしての朗読 (2012年、アイ文庫/Kindle)
ストリーム (2016年、アイ文庫/Kindle)
桟橋 (2016年、アイ文庫/Kindle)0
祈る人1 彼女が神様だった頃(2016年、アイ文庫/Kindle)
祈る人2 今朝の蜜蜂は羽音低く飛ぶ (2016年、アイ文庫/Kindle)
祈る人3 アンリ・マティスの七枚の音 (2016年、アイ文庫/Kindle)
祈る人4 青い空、白い雲 (2016年、アイ文庫/Kindle)
仕事をやめたいと思ったときに――共感ハンドブック Vol.1 (2017年、アイ文庫/Kindle)
共感的コミュニケーション2017 (2017年、アイ文庫/Kindle)
マインドフル練習帳(2017年、アイ文庫/Kindle)
【Wikipediaより一部引用添付】

●【水色文庫について】
http://mizro.blogspot.com/
ここに掲示するテキストの著作権は水城ゆうに帰属しますが、朗読(音読)についての著作使用権は解放します。朗読会、朗読ライブ、朗読教室、その他音声表現活動などで自由にお使いください。
(サイトより添付)

---- Jazz Story #6 -----「Solitary Woman」
「Solitary Woman」 水城雄
 洗濯ものがまだ干しっぱなしになっていた。
 まっ暗な部屋に帰ってきた彼女は、あわててベランダに出て、乾ききった衣類を取りこんだ。
 部屋の蛍光灯は明るすぎる。
 六畳ひと間。夫と別れ、生まれ故郷から出てきた彼女には、それがせいいっぱいだった。頼れるのは、古い男友だちがひとり。彼のほうも離婚したと聞いていたのに、たずねてみると新しい恋人と暮らしていた。
「とにかく、口をきいてやるから、面接だけでも受けてみろよ」
 と、知り合いの会社を紹介してくれた。迷惑顔でもありがたかった。
 床にすわりこみ、取りこんだ衣類をたたみながら、昼間のことを思いだしていた。
「ちょっといいですか」
 女から突然声をかけられ、思わず答えてしまった。
「なんです?」
「よろしければアンケートに答えてくれませんか。美容に関する簡単なアンケートです。お時間は取らせませんので」
 キャッチセールスだろう。話には聞いたことがあった。実際に見るのは初めてだ。
 女の年齢はこちらより少しだけ上だろうか。
「すみません、急いでいるので」
 これから面接に行こうとしていた。心も身体も冷たく緊張していた。
 すると女は、ぱっと手を伸ばすと、こちらの腕をぐっとつかんできたのだ。
「痛いです、放してください」
 びっくりして腕をふりほどこうとすると、女はさらにぎゅっと指に力をこめた。
 目が合った。その瞬間、女がいった。
「気取ってんじゃないよ」
 さっと腕を引き、立ち去った。
 しばらく動くことさえできなかった。これが都会というものなのか。
 面接会場に着くと、会社の男にいわれた。
「どうかしたんですか。顔色が悪いですよ」
 シャツの皺を伸ばしてたたみながら、そんなことを思いだしている。
「採用の場合は、あとで連絡します」
 携帯電話にかけてくれるように頼んだ。不採用の場合は、連絡はなし。
 私はこれからどうなるのだろう。
 ひとりぼっちだ。友だちはいない。仕事もない。明るすぎる蛍光灯を取りかえるお金もない。
 明日もまた、この街に向かっていけるのだろうか。
 べつに気取ってなんかいない。なにをどうしていいかわからないだけだ。
 そのとき、開けたままだったベランダのドアから、音楽が聞こえてきた。
 ラジオの音ではない。CDの音でもない。だれかがギターを弾いているのだ。
 不思議な音色のギターだった。聞いたこともないメロディ。聞いたこともないサウンド。
 近くだ。たぶん、おなじアパートの別の部屋からだろう。
 彼女は洗濯物をわきへどけると、立ちあがり、ベランダに立った。
 静かで、不思議なギターの音色が、大きな飛行船の影のように彼女を包みこんだ。
 ギターの音がやんだ。
 ポケットの電話が鳴りはじめた。

声/動画作成/サムネ作成/こいでともか
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※挿入曲は「YouTubeオーディオライブラリー」より選曲し、楽曲を無償提供してくださるアーティストの皆様に心より感謝し使用させていただいております。

by tomoka-koide | 2021-01-15 17:30 | 水城ゆう